オンフルールの街を見渡す
ルーシーの実家から車で少しのところにあるモン・ジョリという丘へ連れて行ってもらった。この丘の両側から二つの街を見渡すことができる。この上の写真に写っているのは作曲家のエリック・サティが生まれた街で知られるオンフルールだ。ノルマンディー大橋が見える。この時は時間の都合でオンフルールの街を散策することができなくて残念だったけれど、オンフルール行きはその10年後、2018年3月に実現することになった。これについてはまた別の投稿で書きたいと思う。
遠くの対岸に見えているのはフランス第二の港町ル・アーヴル
2006年ごろパリ滞在中に知人のNさんに誘われて、ナントの巨大人形劇Loyal de luxeの像と少女のスペクタクルを観に訪れたのがこのル・アーヴルだった。あれから留学してまさかこの街を対岸から眺めることになるとは思いも寄らなかった。ル・アーヴルは港町ながらマルセイユなどとは異なりどちらかという工業都市で、第二次大戦で壊滅的な被害を受けたということもあり(おそらくノルマンディー上陸作戦が関係している?)、建物はほとんどどれも近代的で古い地域はごくわずかしか残っていなかった。確かフランスの作曲家トリスタン・ミュライユの出身地だったと思う。
モン・ジョリの丘にある教会
この丘に到着したのは、日曜日の朝の礼拝が終わる頃。なかなか古い教会だ。なぜここにルーシーたちが私を連れてきてくれたかというと、それは珍しい鐘が聴けるということだった。
教会のプレート。ノルマンディー公のリシャール2世が11世紀ごろ建立したシャペルは16世紀に地すべりで喪失されて、その後17世紀にこの今のシャペルがオンフルールのブルジョワや水夫たちによって再建されたらしい。
海のそばに建つここモン・ジョリの教会の内部には、いくつも小さな船のマケットが天井から吊る下げられていた。ブルターニュのカルナック海岸に近い古いシャペルのなかにも船の線画が残されていたのを思い出す。ルーシーによれば、オンフルールの漁師や水夫たちの航海や漁の安全を願う意味も込められているそうだ。
教会の傍に建立された鐘たち
そしてルーシーが私に見せたかったのは、この教会の鐘。確かにこんな鐘は今まで見たことがなかった。普通は尖塔のなかに鐘があって外から見えないし、こんなに大小さまざまな鐘があるのは珍しいだろう。そしてもっと驚くべきことに、この鐘たちは自動で鳴り響くのだ。日曜日の礼拝が終わって少し待っていると、ぽつぽつと鐘がひとりでに揺れ始めた。最初はゆっくりと、そしてだんだんはやくなっていく。鳴り響く鐘の数が少しずつ増えていって、次第に大きな響きの調べになっていくのはなかなか壮観な眺めで、静かに聴き入る。本当によく造られていて一糸乱れのない動きで、ひとつひとつの鐘の鳴り響くテンポや回数も正確に仕組まれているのがよくわかった。10分程度だっただろうか、ひとつ、またひとつと鳴り響く鐘の数が減っていって、最後の鐘がゆっくりスピードを落として鳴り止むと、モン・ジョリの丘は再び静けさに包まれた。(この投稿は過去に書いた再録ではなく、振り返って新たに書き下ろしたものです。2018年記。)







