まずはサン・タンヌ広場へ

レンヌに初めて日本からの友人を迎えた。レンヌに11時8分に到着するので、ホームに行って列車番号の位置を確認してお出迎えするつもりだったけれど、なぜか車両表示の電光掲示板に7号車の番号がなし。どうしてだろう?と不思議に思いながら仕方なくホームの真ん中あたりで列車の到着を待つ。到着した列車から降りる人々を目で追うものの、パリ・モンパルナス9時5分発のTGVはほぼ満員だったらしく、ホームはあっという間に人ごみに埋もれた。前よりの車両をざっと見ても見当たらないので、後方へと歩いて行くと、みーつけた!あのときは気がつかなかったけれど、たいてい2つのTGVが連結してブルターニュ方面の列車は走っているので、前よりの車両はブレスト行き、彼女が乗っていたのはレンヌ終点のTGVだったのだ。ふだんレンヌ止まりのTGVは走っていないけれど、土日はおそらく臨時列車として走っているのだろう。彼女によれば、パリを出てから一度も停車しなかったというので、それもふだんではありえない。へ〜そんなTGVが走っているのかと驚いてしまった。出発前にレンヌで再会を約束していた彼女は、短いパリ滞在の合間をぬってレンヌまで来てくれた。でも今日のレンヌは小雨の降る、冷たい北風の吹くあいにくの天気だった。子供たちで溢れるメリーゴーランドや古本市、アンティーク市などで賑わうサン・タンヌ広場も寒々としていた。

広場からそのままマルシェへ。寒いなか相変わらずたくさんの人で賑わうマルシェで、私の一週間分の野菜を買う。ポワロやBioのたまご、朝食用Pain blanc(半分)、マッシュルーム山盛り、そして赤いパニエにいろんな種類のりんごが入って売っている農家のところで、彼女の推薦にしたがって、いつもは買わない種類にも手を伸ばす(約9種類くらい違う品種が並んでいる)。大きめのりんご5つで1、5ユーロと聞いて彼女は思わず驚きの声をあげていた。全て違う種類にしたので、今週は食べ比べるのが楽しみだ。それから今が旬のクレモンティーヌ(みかん)もビタミン補給のため500g買う。甘すぎずフレッシュで美味しい。その後、最近お気に入りのギリシアのおかし(月や丸い形のノワゼット入りのクッキーで、白い粉砂糖がまぶされている)を売っているお店へ。だんだん決まったお店で買うようになってきたので、もう顔を覚えられていてどのお店でも笑顔で迎えてもらえるのがうれしい。だいたい買えたところで、私の住むレジデンスへ。18世紀の石造りの建物と聞いてもっと古い内装を想像していた彼女には、シンプルで新しいステュディオの室内が意外だったようだ。お昼のランチを12時半に予約していたので、少し部屋で寛ぐ。おせんべいやお吸い物の粉、彼女お手製の首飾り(遅ればせのお誕生日プレゼント!)、母から托されたという手編みのセーターとマフラー(Merci, maman!)を頂く。その後中世の一角へランチに出かける。

レストランはこんな感じ

Dune Merveille(神秘的な砂丘)というお店で、レストランのほかシャンブル・ドット、インテリアのブティック、サロン・ド・テが併設されている。外観を撮り忘れてしまったけれど、グレーの壁に白の木が組まれた16世紀築の古いメゾンで、シックなお店だった。お店のMenuにはこのメゾンにまつわる歴史がながながと書かれていて、歴代の貴族たちが所有してきた由緒ある建物らしい。1720年の大火の際一部が焼失したものの、大部分は昔のまま今に至っているとのこと。サロンには大きなソファーがゆったりと置かれてくつろぎの空間が広がり、レストランはグレーの壁、古材を使ったチャコールグレーのテーブル、グレーの空間を引き立てるシャンデリア、銀食器、白のリネンのテーブルクロス(刺繍も生地も上質)と、エレガントという言葉がぴったりの空間になっていた。お料理も洗練されていてどれも美味しく頂いた。これまでの出来事やいろんなことを話して、楽しいひとときがあっという間に過ぎて行った。

クリスマス・ツリー

美味しい食事を頂いたあとは、いざ中世の一角のお散歩へ。彼女曰く「夢のようなところね」という言葉通り、このあたりは何度訪れても現実とはかけ離れた時空間が漂っている。彼女も気に入ってくれた様子でうれしかった。

曲がりくねった路地を歩いて、サン・ピエール大聖堂へ。写真で見えるよりも実際はもっと薄暗い空間で、古い荘厳な雰囲気をもったこの大聖堂、土曜日の午後は誰もいなくてことのほか静かだった。明日は午前はいつも通りミサが、そして入口に貼られていたコンサートの告知では、午後4時からパイプオルガンのコンサートがあるそうだ。一度パイプオルガンの音色を聴いてみたいと思っていたので、明日行ってみようと思う。フランク、リスト、メンデルスゾーンのオルガン作品ということで、楽しみだ。日帰りの彼女は残念そうだったけれど、なんといっても彼女は月曜日パリで、新プロダクションによるモーツァルトの《魔笛》をバスティーユで聴くのだから!シーズン始めで完売した人気の演目。噂によるとかなり現代的な演出らしいので、感想を聞くのが待ち遠しい。

豪快な屋台

その後、中世の一角を抜けて市庁舎やオペラ座のある広場へ。ふだんは穏やかなレンヌの街も、土曜日は多くの人で賑わう。ブルターニュ高等法院の広場へ向かうと、もうクリスマスのマルシェが始まっていた。美味しい匂いがあちこちから漂って来て、子供や家族づれでいっぱい。冷やかし半分に二人でいろんなお店を覗いて歩く。そうこうしているうちに、早くも4時に。パリへ戻るTGVは5時発なので、もう一度のんびりお茶をしてから別れることに。

看板がレトロ

クッキーのオーナメント

帰りのホームで彼女を見送るとき、自分でも思いも寄らず何とも言えない感情がこみ上げて、涙してしまった。ホームで人を見送るというシーンがだめだった。とくに悲しい気持ちはないのに流れ落ちる涙に当惑しながらも、また元気で逢おうねと手を振って電車を見送った。考えたら、初めて大学3年でフランスに降り立ったとき一緒だったのは彼女。友人と言っても母と子くらい年齢差がある。それから留学が実現するまで、本当に何でも聞いてくれて、ずっと見守って来てくれた彼女と再会して、気が緩んでしまったのかもしれない。