P.シェフェール『ミュジック・コンクレート』について

現在翻訳中のピエール・シェフェール著『ミュジック・コンクレート』(PUF, 1967)の出版に関わる文書を、短期の調査滞在の合間に閲覧してきました。覚え書き程度ながらここにちょっとメモします。PUFから最初の打診があったのは1964年ごろ(2月20付の手紙)で、この頃にはほぼ『音楽オブジェ論』の草稿を書き上げていたシェフェールは、よりアクセスしやすいクセジュ文庫の出版を快諾しました(同年4月10日付)。クセジュ文庫の原稿が出来上がったのは『音楽オブジェ論』が出版されたあと、PUFからシェフェール宛に送られた原稿受諾の御礼を伝える手紙から(4月15日付)、1966年4月頃と推測されます。その後1966年10月にクセジュ文庫『ミュジック・コンクレート』は出版されました。

初版は予定の8,000部ではなく、実際には10,000部に増やされたようです。いくつも献本リストが作成されており、アンドレ・オービンやメシアン、ジョリヴェ、モーリス・オアナ、シュトックハウゼン、リゲティ、クリスチャン・ウォルフなどの内外の作曲家からアントワーヌ・ゴレア、ダニエル・シャルルなど批評家たち、各主要な音楽誌、海外の各電子音楽スタジオ(NHK電子音楽スタジオを含む)等に送付されているのがわかりました。フランスの新聞や音楽誌に掲載された書評の切り抜きや、献本のお礼を伝える書簡等もあり、いずれも好評だったことが伺えます。当時すでに広く知られていたシェフェールの活動を知ることができると同時に、ミュジック・コンクレートの現在と未来を考える本として、また専門家ではない人にも読める本として推薦する書評がほとんどでした。

その後、1973年2月にチェコ語版がプラハの出版社Suprahonから刊行されたあと、同年の12月には第二版が出版されました(12月12日付PUFからの書簡)。この第二版(1973年)の存在は、私が昨年オンラインで偶然見つけた原書からわかっていましたが、実際の資料からも裏付けられたことになります。この第二版はシェフェールというよりも、実質的にはミシェル・シオンによる部分的な改訂が施されて出版されたことがシオンのシェフェール宛の書簡からわかりました。実際に読み比べてみると、部分的ながら改訂が思いのほか施されていることが判明し、日本語版の翻訳にあたって反映させるつもりです。

それから2年後の1975年2月にはこの第二版に基づいたドイツ語版がErnest Klettから刊行され、翻訳版の刊行にあたってドイツの出版社から付録ディスクの提案もあったことがPUF翻訳部からシェフェール宛の書簡(1973年12月28日付)から読み取れますが、実際に付録ディスクが作成されたか今後調べてみたいと思います(フランス語版はその後も付録ディスクは作成されず)。

翻訳が出来上がった際には、書評等から読み取れることなども含めて、あとがき等にまとめたいと思います。また、シェフェールの奥さまジャクリーヌ・シェフェールさんと面会し、シェフェールの自宅の仕事場なども訪問することができたので、それについてもどこかで書きたいと思います。ちなみに写真はシェフェールの書棚にある初版に第二版(左)の改訂された部分をジャクリーヌさんが書き込んでいる時のものです。